今回は、電車好きな子を持つ親にオススメの本、「電車好きな子はかしこくなる」(弘田陽介、交通新聞社)を、自分のメモがてらご紹介します。
息子がどんどん電車好きになっていくなか、「どうやって子育てに電車を取り入れるのが効果的か」という課題に、ヒントをくれた本です。
電車に限らず、子供が好きなものをどう発展させていくかという視点で、非常に参考になります。
鉄道という素材は、「認知スキル」「非認知スキル」を両方伸ばす
著者は、かしこさの中身には、「認知スキル」と「非認知スキル」があるといい、両方を伸ばすのに「鉄道」は抜群の効果を発揮すると述べています。
認知スキル = 記憶力や理解力
非認知スキル = やり抜く力、協調性、思いやり、自制心
自分の子供時代を振り返っても、学校で教え込まれたのは認知スキルばかりような。
電車に親しみながら、どうやって両方のスキルが伸ばせるのでしょうか。
鉄道で「認知スキル」を高めるには
日本の鉄道は、色や形のバリエーションが世界一豊富だと言われます。
海外の地下鉄なんかだと、系統ごとに全く異なる車両デザインなんて、ほとんどないのではないでしょうか。
そんな種類豊富な電車のカラーリングや微秒な車両の違いを見分け、知識と事物の繋がりを増やしていくことで、発達心理学上の「カテゴリー分類」の発達が促されるといいます。
これは、物事の階層的な区分を可能にするもので、例えば、電車と飛行機の違いを見分けられるというのが基礎的なレベルだとすれば、新幹線のN700系とN700A、N700Sの違いを見分けるとなると、かなり上位の階層認識であると言えます。
このような言葉とカテゴリー認識の能力の発達は、いわば頭の中に整理棚を作っていくような作業です。(中略)このような整理棚が、例えば一度、鉄道の世界を通じて、子供の頭の中に作られるとするならば、その後、昆虫とかカードゲームとか別に関心を持つ世界を全体として理解する時にも大きな力を発揮します。
何かをマスターするとその経験が他にも生きるというのは、知識を蓄える脳の中の「本棚」が、他の世界を捉える時にも有効だからなんですね。
ツール①図鑑
分類するための秩序を見出すのに、効果的なのが「図鑑」。
脳科学と子育ての繋がりを研究している瀧靖之氏の研究結果として、こんなことが紹介されていました。
(成績を)伸ばし続ける子の親は勉強しなさいと言わずに、図鑑などを使って子供の好奇心を上手に育てていた
(中略)
一旦図鑑を与えて、それを見ながら親子がいろいろな会話をして、子どもの学ぶ素地ができれば、その後は子どもが自分でどんどん知識を蓄えて、さらに別の図鑑や書物から別の知識を吸収していくというわけです
息子もはじめに興味を持ったのは新幹線でしたが、その後、特急列車や通勤電車、地下鉄、モノレール、路面電車…と、認識できるカテゴリーをどんどん増やして行きました。
最近は、モノレールの「懸垂式」と「跨座式」の違いを見分けるのが好きなようです。
これも、「モノレール」というカテゴリーのさらに細かい分類ができるようになったということですね。
ツール②博物館
図鑑と並んで子供の知識の体系化に役立つものに、博物館が挙げられています。
実物が体系的に並んでいることや、運転士や運行管理者の視点も体験できることが、図鑑にはない大きなポイント。
息子は2歳なので、埼玉の鉄道博物館、名古屋のリニア館に行った時も、体系立てて展示を見るには至りませんでした。
(1番のお気に入りは、どこに行ってもプラレールエリア。笑)
でも、電車図鑑で疑問に思っていた「はやぶさの車輪はどんなのだろう?」を解決すべく、鉄道博物館の実車を覗き込んで見たことは、半年以上たった今もよく覚えています。
「好きこそ物の上手なれ」を徹底的に伸ばすことが大事
好きだから知りたい、知ってさらに面白くなって、面白いから調べて…というサイクルが、知識を吸収する力を大いに伸ばしてくれます。
(息子の場合、「覚えたことを披露すると、大人がびっくりして褒めてくれる」ことも、大きな喜びになっているようです)
だから結局は、電車でもポケモンでもアンパンマンでも、なんでも良いのですよね。
著者の弘田先生もこう書いています。
一度どんなジャンルでもいいので膨大な知識を吸収し、整理することを経験しておけば、その後の人生で他に興味があるジャンルが現れても同じように自分で学んでいくことができます。
(中略)
鉄道を介して、駅名や用語、路線図を覚えていくことの意義は、覚えたものがその後の人生で役立つという保証ではなく、幼い頃から知性を働かせ、記憶するトレーニングをしている積み重ねに他なりません。
こう聞くと、鉄道ばかり好きで大丈夫かな?と思う親の心が、とても軽くなります(笑)
鉄道で「非認知スキル」を高めるには
「非認知スキル」は人付き合いのための力なので、育むためには、特に保護者との関わりが不可欠といいます。
発達心理学では、親子が一緒に電車を見るというような「同じ対象に興味を持つ」ことを、「共同注意」と呼び、親子関係にとって重要な要素だとされています。
電車が見えるスポットで親子が一緒に電車を待ち、同じように興奮し感激することが、親子関係の愛着の基礎となります。
元々電車が大好きなご両親のお子さんが電車好きに育ったら、これ以上ない幸せということですね(笑)
絵本の読み聞かせ
お父さんやお母さんの膝の上で読み聞かせてもらう絵本は、まさに「共同注意」の経験。
本書でも、具体的な絵本を紹介しながら紹介されていました。
実際の電車乗車体験
近年の筑波大学の谷口研究室の調査で、幼少の生活習慣として車に乗る機会が多いことは、子供の傲慢さを高めるということを実証した研究があるそうです。
私的空間である車よりも、マナーが重視される電車の方が、道徳性や社会性が育まれるというのは、確かに想像しやすいところ。
電車内を単なる移動で終わらせず、「意識的に教育の場とする」と考えて、お年寄りに席を譲るとか、他人との会話の仕方とかを、お手本として見せていくのが大事とのこと。
子供のぐずった場合の対処についても、年齢別にアドバイスがありますので、興味のある方はぜひお読みください。
いかがでしたか?
意識的に鉄道を教育に取り込んでいく工夫が、本書には多く提示されていて、私はとても役立ちました。
もう一つ繰り返し本書で強調されていたのは、「子供の質問には、丁寧に答えてあげてください」ということ。
分からなかったら、図鑑や専門家に聞いて知識を深めたり、子供にそれを分かりやすく説明していくことが、将来子供の調べる力や伝える力になっていきます。