我が家では、福音館書店の「ちいさなかがくのとも」を毎月購読しています。
2022年12月号の「ゆきかきでんしゃ」は、地元・札幌のササラ電車が主役!
降雪の少ない関東圏では、雪と電車といえば、遅延や運休といったニュースでの関わりが多いかと思います。
でも冬のあいだ数ヶ月雪に覆われる地方では、日々どのように排雪や対策をし、どんな景色の中を電車が走っているのでしょう?
普段はなじみがない電車の姿や、裏方の車両を知ることができるのも、絵本の魅力。
今回は息子5歳が大好きな、雪と電車がテーマのおすすめ絵本6冊をご紹介します。
ゆきかきでんしゃ
鈴木 周作 作/ちいさなかがくのとも 2022年12月号 (福音館書店)
「ゆきかきでんしゃ」こと「ササラ電車」は、我が家でも人気者。
年末に札幌に帰省するたび、大雪が降ると「ササラ電車が走ってるかも!?」と、祖母・私・息子で急いで車で市電通りに向かい、ササラ電車を探して線路沿いをひたすらドライブ…というのを何度やったことか。
図々しくも電車事業所の事務所を訪ね、「つかぬことを伺いますが、いまササラ電車って出動していらっしゃいますか」と聞いたこともあります。
(丁寧に教えていただいて感謝しました)
この「ゆきかきでんしゃ」は、地元民が絵を見れば「ここ、中央図書館前だね」「新しくSEIYUができたところ」「駅前の4プラのあたり」とすぐ場所が浮かぶほどに背景もリアル。
除雪車の迫力も感じつつ、丁寧に雪をかいていくおなじみの姿がすぐに浮かびます。
作者の鈴木周作さんは札幌ご在住だそうで、繰り返し観察されたであろうササラ電車への親しみのこもったまなざしが、ひしひしと伝わります。
もし冬に札幌旅行をされる機会があれば、ぜひこの絵本を読んでから市電に乗ってみてほしいです。
ササラ電車は、冬場は毎日の早朝4時に必ず走っていますが、小さい子を連れては難しいですね。
日中でも雪が降り始めると出動することがあるので(10センチ以上の積雪が予想されるときが多いとのこと)、天気予報をみながら、ササラ電車が見られるか市電通りに行ってみるとよいかもしれません。
(電車事業所前駅に行くと、事業所の他の市電も見られるので楽しいです)
ちなみに、今回のちいさなかがくのとも付録冊子には、なんと札幌市交通局の方が寄稿されていて、大興奮(私が。笑)
ブラシ部分(竹でできており「ササラ」と呼ばれる)の歴史や作り方、出動のタイミング、乗務員についてなどの解説をしてくださっています。
※福音館書店の月刊絵本は、発行からしばらく経つと品切れになってしまうことも多いです。
私は1年間のラインナップを見て良さそうだったら、下記Fujisanで定期購読しています。
(○月のこの絵本だけ欲しい!という時は、定期購読せずに出版直後に買うようにしますが、よく忘れる…)
ゆきぐにれっしゃだいさくせん
横溝英一 作・絵(小峰書店)
小4と小2の男の子の兄弟が、「雪国へいってみよう」と上越線で越後湯沢まで旅するお話。
無邪気にはしゃぐ弟と、乗る電車や時刻を気にして緊張気味のお兄ちゃん、というのが男兄弟を育てる母にはグッとくるのですが、子供にとっては単純に雪国への電車旅行としてワクワクするようです。
ラッセル車が除雪するシーンも出てきますよ。
絵本に描かれているように、雪国へ電車で向かうときって、一瞬で窓の外が雪景色に変わるんですよね。
さっきまで土の地面だったのに、ふいに魔法にかかったように真っ白な地面にかわり、窓から冷気がキンキンと伝わってくる。
そんなスピード感が、子供たちの心情と共に丁寧に描かれています。
はたらきもののじょせつしゃ けいてぃー
バージニア・リー・バートン 文・絵 / いしい ももこ 訳 (福音館書店)
3歳くらいに購入して以来、お気に入りでよく読み返しています。
キャタピラのついたトラクターが、大雪に埋まり都市機能を失った街じぇおぽりすのために、ぐんぐん雪をかいて病院、消防署、電話局、飛行場、と人々を助けていくお話。
購入当初は文字が多くて飽きちゃうかな?と思ったのですが、息子はじーっと聞いて惹きつけられていました。
街がすっぽりと雪に埋まった場面では絵も少なく、「30せんち……60せんち……1めーとる……」としんしんと積もっていく雪の描写が、石井桃子さんのテンポ良い言葉のみで描写されます。
最初は息子が飽きないように急ぎ目に読んでしまっていましたが、最近はようやく、しんしんとふる雪に合わせるように、じっくりじっくりこのページを読めるようになりました。
黒部の谷のトロッコ電車
横溝 英一 文・絵 (福音館書店)
「ゆきぐにれっしゃだいさくせん」とおなじ、横溝 英一さんの絵本。
黒部峡谷を走るトロッコ電車が、なぜこんな絶壁の間を走っているのか、その歴史と1年間の様子を描いています。
トロッコ電車と雪との関わりは、働く人たちが冬支度を始めるあたりから描かれます。
「雪の大谷」で知られるように、この地域は何メートルもの積雪を記録する豪雪地帯。
そのため、トロッコ電車は降雪が本格化する前に、駅の屋根やレールや鉄橋、さらには送電線や電柱まで外して、トンネルの中にしまっておくのだそうです。
一見可愛らしい姿の電車なのに、実は力強くたくましく働いているというギャップが魅力です(しょうぼうじどうしゃじぷた、みたい?)。
以前富山に旅行した際は、黒部峡谷は遠くて断念しましたが、子供が大きくなったら訪ねたいです。
急行「北極号」
C.V.オールズバーグ 絵と文/村上春樹 訳
村上春樹の翻訳…という点に惹かれて、大人が欲しくて購入しましたが(笑)、息子も気に入って読んでいます。
クリスマス前夜、子供たちを載せた蒸気機関車は、降り積る雪やオオカミのいる暗い森を抜けて、サンタがいる北極点を目指します。
著者オールズバーグさんの絵本はこれしか持っていませんが、1枚1枚のページの絵が、まるで美術館で眺める絵画のように幻想的です。
チョコレート・バーやヌガーといった海外っぽい食べ物や、キンキンと冷える冬の夜の静かな美しさ、そしてもちろん村上春樹の文章にも引き込まれます。
やこうれっしゃ
西村 繁男 作
大好きな西村繁男さんの傑作。
文字がない絵本で、上野駅から発車した夜行列車が金沢に到着するまでの様子を描いています。
発車してすぐは車外には都会のネオンが見えていますが、トンネルを抜けた頃から雪がちらつきはじめ、最後は雪が積もる北陸に到着。
除雪している人たちの姿も描かれます。
初版が1983年で昔の寝台列車の様子が描かれており、服装や食べ物、車内の設備などもレトロな雰囲気。
昔の上野駅はこうだったのか〜と比較してみるのも楽しいです。
いかがでしたか?
寒くなると外遊び時間も短くなりがち。
雪国を走る電車を思い描きつつ、おうちでぬくぬくと、たくさん絵本を読みたいですね!